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2013年10月24日(木)23:31(+0900)

いろは歌で追う日本語の音変化の歴史

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今日は、やや以前に作った、日本語の音変化についての動画も兼ね、日本語の音変化の歴史について、いろは歌を例に追ってみます。

いろは歌について

まずはいろは歌について。いろは歌は、ご存知、

いろはにほへと ちりぬるを
わかよたれそ つねならむ
うゐのおくやま けふこえて
あさきゆめみし ゑひもせす

という、仮名47文字を重複せずに使って作られた歌で、平安時代中期頃には存在していたとされています。

現代日本語の発音では、

いろわにおえど ちりぬるお
わがよたれぞ つねならん
ういのおくやま きょーこえて
あさきゆめみじ えーもせず

のように読みますが、いろは歌が作られた当時は、歴史的仮名遣いのとおりに読んでいたと考えられています。

拗音、撥音、清音、濁音

当時の日本語には、現代日本語の拗音(ゃゅょ)や撥音(ん)にあたるものは存在しませんでした。一方、清音と濁音は当時から別の音として存在しており、仮名の上でのみ区別せずに書いていたので、清音と濁音が組となっている音は、片方のみ使われていることになります。

いろは歌48文字説

ところでいろは歌は七五調の歌ですが、「わがよたれぞ」の部分が六文字しかありません。一説によると、この部分は本来は「わがよたれそえ」であったとされています。

昔の日本語には「ア行のエ」と「ヤ行のエ」の区別がありましたが、いろは歌の「けふこえて」の「え」は、「ヤ行のエ」にあたります。 そこで、六音の「わがよたれぞ」に「ア行のエ」を入れ「わがよたれそえ」にすると、昔の日本語の音韻により合致し、韻律の面でもきれいな七五調になるというわけです。

いろは歌が元々は47文字ではなく48文字だったという説は、必ずしも広く認められているわけではないでしょうが、ここでは便宜上48文字にします。

なお、ひらがなの「え」は元々は「ア行のエ」を、カタカナの「エ」は元々は「ヤ行のエ」を表していたので、「けふこえて」の「え」はカタカナで書くことにします。 なお、「ヤ行のイ」「ワ行のウ」については、日本語には元々存在していなかったか、日本語が文献に記されるより以前に消滅したと考えられています。(※英語には「ヤ行のイ」や「ワ行のウ」にあたる音が存在しています)

ということで、清音と濁音の区別をし、「ア行のエ」を加えた

いろはにほへど ちりぬるを
わがよたれそえ つねならむ
うゐのおくやま けふこえて
あさきゆめみじ ゑひもせず

について、日本語の音変化を見ていくことにします。

いろは歌で追う日本語の音変化の歴史

古代日本語(6〜7世紀?、古墳時代後期〜飛鳥時代?)

いろぱにぽぺど てぃりぬるうぉ
わがよたれちょえ とぅねならむ
ううぃのおくやま けぷこいぇて
あちゃきゆめみぢ うぇぴもちぇぢゅ

ここでいう古代日本語は、奈良時代の上代日本語よりもう少し前の日本語を想定しています。

古い時代の日本語では、ハ行は「パ行」の音であったとされています。サ行は「シャ行」または「チャ行」、あるいは「ツァ行」の音だったとされ(※ここでは「チャ行」音を採用しています)、タ行は「タ、ティ、トゥ、テ、ト」、ヤ行は「ヤ、ユ、イェ、ヨ」、ワ行は「ワ、ウィ、ウェ、ウォ」でした。

また、当時の日本語には上代特殊仮名遣いと呼ばれるものがあり、当時の日本語はイ段、エ段、オ段の一部に甲乙二種類がある8母音の音体系であったとされています(上代特殊仮名遣いについては異論もあるようです)。

ただし、ここでは上代特殊仮名遣いは反映させていません。(私に知識が無いので^^;)

上代日本語(8世紀、奈良時代)

いろふぁにふぉふぇど てぃりぬるうぉ
わがよたれちょえ とぅねならむ
ううぃのおくやま けふこいぇて
あちゃきゆめみぢ うぇふぃもちぇぢゅ

8世紀の奈良時代頃に、ハ行、つまり「パ行」の音が、「ファ行」の音になったとされています。

上代特殊仮名遣いは、引き続き反映させていません。

前期中古日本語(10世紀、平安時代前期)

いろふぁにふぉふぇど てぃりぬるうぉ
わがよたれちょいぇ とぅねならむ
ううぃのおくやま けふこいぇて
あちゃきゆめみぢ うぇふぃもちぇぢゅ

平安時代に入り9世紀頃になると、上代特殊仮名遣いはほぼ消滅しました。

10世紀には「ア行のエ」と「ヤ行のエ」の区別がなくなり、どちらも「イェ」と発音されるようになります。

後期中古日本語(11世紀、平安時代中期)

いろわにうぉうぇど てぃりぬるうぉ
わがよたれちょいぇ とぅねならむ
ううぃのうぉくやま けうこいぇて
あちゃきゆめみぢ うぇうぃもちぇぢゅ

11世紀には、ハ行、つまり「ファ行」の音が、語頭を除いて「ワ行」の音になります。また、「ア行のオ」と「ワ行のヲ」の区別がなくなり、どちらも「ウォ」と発音されるようになります。

前期中世日本語(12世紀、平安時代末期)

いろわにうぉいぇど てぃりぬるうぉ
わがよたれそいぇ とぅねならん
ういのうぉくやま けうこいぇて
あさきゆめみじ いぇいもしぇず

中世になると、サ行は「サ、シ、ス、シェ、ソ」と発音されるようになります。

平安時代末期の12世紀には、「ア行のイ」と「ワ行のイ」の区別がなくなり、どちらも「イ」と発音されるようになります。「ワ行のエ」も「ア行のエ」と区別されなくなり、「イェ」になります。また、撥音の「ン」も日本語の音素として定着してきます。

後期中世日本語(15世紀、室町時代)

いろわにうぉいぇど ちりぬるうぉ
わがよたれそいぇ つねならん
ういのうぉくやま きょーこいぇて
あさきゆめみじ いぇーもしぇず

室町時代、すなわち15世紀前後になると、タ行が「タ、チ、ツ、テ、ト」と発音されるようになり、ダ行の「ヂ、ヅ」とザ行の「ジ、ズ」の区別が曖昧になってきます。 また、「ケウ」が「キョー」と発音されるようになるなど、日本語に長音が生じ、拗音も定着してきます。

近世日本語(17世紀、江戸時代前期)

いろわにおいぇど ちりぬるお
わがよたれそいぇ つねならん
ういのおくやま きょーこいぇて
あさきゆめみじ いぇーもせず

17世紀の江戸時代になると、中世には「シェ」と発音していた「サ行のセ」が、関東方言に由来する「セ」の音で発音されるようになります。 また、「ウォ」と発音していた「ア行のオ」も、「オ」の発音になります。

いろは歌には存在しませんが、主に語頭に残っていた「ハ行」の音が、それまでの「ファ行」から現在の「ハ行」になったのもこの頃です。

現代日本語(19世紀〜21世紀、江戸時代後期〜現在)

いろわにおえど ちりぬるお
わがよたれそえ つねならん
ういのおくやま きょーこえて
あさきゆめみじ えーもせず

18世紀になると、それまで「イェ」と発音していた「ア行のエ」が、「エ」と発音されるようになりました。

こうして、現代日本語の発音体系が出来上がりました。

中古日本語で百人一首

なお、昔の日本語(上記の区分では前期日本語)で小倉百人一首を詠んだ動画も作ってみました。いろは歌に比べて、何となく現代日本語での発音との差異が小さいような気がします。あくまで何となくですが、、、

うーむ、、、ひょっとしたら、使用頻度の低い音素が音変化しやすい、とかいったのがあるのかな? それとも、いろは歌のほうが強引(?)に仮名を全部使って作った歌だから違和感を感じやすいとか?

参考

  • Wikipedia

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