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2013年5月22日(水)00:46(+0900)

ハンガリー古代文字(ロヴァーシュ文字)で日本語表記

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ハンガリー古代文字(ロヴァーシュ文字)で「芸軌社」
ハンガリー古代文字(ロヴァーシュ文字)で「芸軌社」。文字は右から左に読む。

今日は、ハンガリー古代文字(ロヴァーシュ文字)での日本語表記について。

私は元々いろいろな言語や文字が好きなので、その方面を弊社の活動方針の一つにしようと思っていたのですが、実際の活動は今のところ「アルファベット比較Tシャツ」を出したのみで滞り中。このブログでも言語・文字関係の記事は今までほとんど書いていなかったので、今日は文字関係の記事にします。

ロヴァーシュ文字とは

ロヴァーシュ文字は、今から1000年ほど前にハンガリーで使われていた文字です。現在、ハンガリーではこのハンガリー古代文字であるロヴァーシュ文字がブームになっているようです。

現在のハンガリー人(マジャル人)の祖先は、古くはウラル山脈の周辺に住んでいました。ロヴァーシュ文字は、近くに住んでいたチュルク人(トルコ系民族)が当時使っていた古代チュルク文字(突厥文字)を取り入れたもののようです。

ロヴァーシュ文字は、ハンガリー人の祖先が現在のハンガリーの場所に移住してきた当初は広く使われていたようですが、後にハンガリーがキリスト教を取り入れると、ロヴァーシュ文字は現在のラテン文字(ローマ字)に取って代わられました。しかし、ハンガリー語(マジャル語)圏の一部、特にトランシルヴァニア(現在はルーマニア領)では19世紀頃まで民間で使われ続け、それが廃れた後も研究者や愛好家に親しまれていました。

ロヴァーシュ文字を再び広く使おうという運動は、1980年代頃から始まったようです。21世紀に入ってからは、IT技術の進歩等もあり運動が進展、現在では多くのハンガリーの人がロヴァーシュ文字に親しんでいるようです。

ロヴァーシュ文字による日本語表記私案

ということで、ロヴァーシュ文字による日本語表記法の私案を以下の表に載せます。参考として、ヘボン式ローマ字と、若干修正を加えたハンガリー式日本語ローマ字表記も載せています。

ロヴァーシュ文字による日本語表記私案
*ハンガリー語による日本語表記では、ニャ行はnjではなくnyとなる。
*ハンガリー語による日本語表記では、通常はザ行をdz、ジャ行をdzsとするが、ここで示す「修正ハンガリー式」ではそれぞれz、zsとした。
*ロヴァーシュ文字は通常は右から左に綴る(通常の欧文とは逆向き)。左から右に向けて綴ることも可能で、その場合は左右を反転させた鏡文字で書く。

通常の欧文や現代日本語の横書きは左から右に綴りますが、ロヴァーシュ文字は通常は右から左に綴ります。ただし、通常の欧文と同様に左から右に向けて綴ることも可能で、その場合は左右を反転させた鏡文字で書くようです。フリーのロヴァーシュ文字フォントである「Rovas Kiterjesztett」は、左→右表記用の鏡文字のフォントになっています。

注にあるように、ハンガリー語による日本語表記では、通常はザ行を破擦音のdz、ジャ行を同じく破擦音のdzsで書きますが、ここで示した「修正ハンガリー式」ローマ字ではそれぞれ摩擦音のz、zsとし、ロヴァーシュ文字もそれらに対応する文字にしました。これは、元々のロヴァーシュ文字には(そして、おそらく当時のマジャル語にも)破擦音のdz、dzsが無かったからです。現代のロヴァーシュ文字ではdz、dzsに対応する文字も作られていますが、日本語標準語ではザ行・ジャ行は摩擦音・破擦音を区別せず、状況によってどちらも実際の発話音として現れうるということもあり、どうせなので(?)元来のロヴァーシュ文字で表記可能な体系にしてみました。

以上のような方法で五十音表をロヴァーシュ文字で作ると、以下のようになります。

ロヴァーシュ文字による五十音表
ロヴァーシュ文字による五十音表

以下は、実際にロヴァーシュ文字でいくつかの固有名詞を綴ってみたものです。

ロヴァーシュ文字 ラテン文字 日本語
geikisa 芸軌社
hirosima 広島
asza minami 安佐南
midorii 緑井
higasi hirosima 東広島
szaizsó* 西条
hirosimai egyetem 広島大学
*「西条」は通常のハンガリー語表記では「Szaidzsó」となる。

なお、最後の「hirosimai egyetem」のegyetemは大学を意味するマジャル語で、「gy」に相当するロヴァーシュ文字はここで示した日本語表記法では使用しない文字です。上記日本語表記法で使用しない文字を含めた全ロヴァーシュ文字については、Wikipedia等をご覧ください。

ロヴァーシュ文字は、系統的にはアラム文字系の文字(アラビア文字など)に含まれます。元々のロヴァーシュ文字の綴り字法では、アラム系文字によくあるパターンとして、特定の条件下以外では母音を書かなかったり、となり合う文字どうしが融合して新たな形の合字になるなど、ローマ字に慣れている人にはとっつきにくい面のある文字体系だったようです。

しかし、現在のロヴァーシュ文字綴り字法は、Wikipediaに載っているロヴァーシュ文字を使用した出版物の写真を見る限りでは、母音はすべて書き、文字の融合もさせないようです。ローマ字で書かれた文章を現代風ロヴァーシュ文字で書く場合は、ローマ字を(二文字以上でひとつの音を表す場合等に注意しつつ)そのまま対応するロヴァーシュ文字に置き換えれば良いことになります。

余談:ハンガリー語(マジャル語)と日本語

かつて、ハンガリー人はヨーロッパの中のアジア系民族とされ、またいわゆる「ウラル・アルタイ語族」説によりマジャル語と日本語が同系統の言語だと主張されていたこともありました。

実際にはハンガリー人の故地はウラル山脈の西側、つまり現代の地理区分ではヨーロッパに分類される場所で、その頃のハンガリー人は純粋なコーカソイドだったとされています。またマジャル語と日本語の関係についても、「ウラル・アルタイ語族」だとされていた諸言語は音韻・文法面で一部に類似性が見られるものの語彙面での関係性が見いだせず、仮説の域を出ていないのが現状です。

とはいえ、偶然か必然かは不明にしてもマジャル語と日本語の間に一定の類似性があるのは事実のようです。また現在のハンガリーの地には、ハンガリー人の祖先が移住してきた後にもアジア系を含む多くの民族が移住してきたため、現在のハンガリー人はモンゴロイドの血を若干受け継いでおり、言語や文化にもアジア系のものが含まれているようです。

ハンガリー語(マジャル語)と日本語の類似性のひとつとしておそらく最も有名なのは、ヨーロッパでは人名は通常は「名、姓」の順であるのに対し、マジャル語の人名は日本語の人名と同様に「姓、名」の順である、ということでしょう。

ハンガリーやマジャル語については、私もまだ表面的なことを少し知っているだけですが、言語、文化、その他さまざまな面で、他のヨーロッパの国々とはちょっと違った面白さがありそうです。

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2013年5月22日(水)

人文科学,文字,言語,ハンガリー