芸軌社株式会社
RSS 2.0

芸軌社公式ブログ

2012年5月18日(金)02:13(+0900)

塩水の超流動っぽい振る舞い

このエントリーをはてなブックマークに追加

液体ヘリウムは、2.17ケルビン(マイナス270.98度)まで温度を下げると、超流動という状態になり、容器に入れると容器の壁を登ってあふれてしまうといったような、様々な不思議な性質があらわれます。

さて、超流動液体ヘリウムの「壁を登って容器からあふれる」という奇妙な性質ですが、塩水を使うことによって、超流動を彷彿させる「容器からあふれる」という現象を気軽(?)に再現することができます。

次の写真は、飽和させた塩水を作ってコップに入れ、一週間程度放置したものです。コップの口のまわりについている白いものが食塩で、コップから溢れ出ていることが分かります。(コップに入れた直後の写真は撮ってません>_<)

飽和させた塩水を作り放置したもの
飽和させた塩水を作り放置したもの。塩がコップの壁を登って口から溢れている。

上の写真では、塩が溢れ出ている様子が分かりにくいですが、横から見ると、コップの白くなっている部分は外側に盛り上がっており、塩がコップの口からあふれ出ていることが分かります。

濃厚な塩水を作り放置したもの(横から)
コップの口の部分を横から。

コップの内側を見てみると、塩水の表面から塩が白く析出しているところまでやや隙間があることが分かります。この部分は、おそらく塩水が表面張力で壁を登っているものと思われます。

コップの内側
コップの内側。水面から塩が白く出ている部分まで隙間がある。

なお塩水のこの現象は、仕組みとしては、紙や布を水につけた時に、その紙や布を伝って水が水面から上がってくる現象と同じものと思われます。ただし、紙や水と違って塩は水に溶け、且つ溶ける量に上限があります。すなわち、まずは塩水中の水分が蒸発することで塩水の表面、コップの壁ぎわの表面張力で塩水が薄く伸び蒸発し、食塩が析出します。この析出した食塩は、コップの中の塩水は既に限界まで食塩が溶けているので、再び水に溶けるということはなくそのまま存在しています。次にこの析出した食塩を足場にして、塩水が更に上まで登っていき、そこで再び食塩が析出します。この繰り返しで析出した食塩は次第に壁を登っていき、コップの口を乗り越えると今度はコップを溢れ出るように外側の壁を下に向かって成長する、というわけです。

ちり紙を伝わる水
ちり紙を伝わる水。コップから溢れ出る塩水は、機構としてはこれと似た現象か?

また、析出した塩は、さわってみると水分をたっぷり含んでおり、指を動かすとすぐにくずれてしまいます。このことからも、析出した塩が更なる析出を行うための塩水の通り道になっていると考えられます。

コップの外側に析出した塩
コップの外側に析出した塩。さわると水分をたっぷり含んでいることが分かる。

なお、溢れ出た塩を少しだけ舐めてみましたが、確かに塩辛く、食塩であることが分かります。ただし、今回使った塩は自然海塩で、本来はにがりの成分が入っているのですが、コップの外側に析出した塩はそれに比べるとずっと無味に近い感じでした。食塩(塩化ナトリウム)はにがりの成分(塩化マグネシウム等)に比べて析出しやすいのかもしれません。

最後に、今回の実験(?)の手順を示します。材料・方法は簡素ですが、時間がかかるのが難点です。

容器から溢れ出る塩水

(今回は台所にあった自然海塩を使用したが、おそらく何でも可)(とりあえず水道水)コップ(透明で口の広いガラスのコップが望ましいと思われる)を用意します。

まず、小さな鍋に塩と水を入れ、飽和させた塩水を作ります。量はコップ一杯分(一応余裕を見て若干多め?)。飽和食塩水には1リットルには300g程度の食塩が溶けているので、塩はコップの容積から逆算して準備します。

次に、鍋を火にかけ、高温でもなおも溶けきらない塩があることを確かめたら、火を止めて塩水が冷えるのを待ち、十分に冷えたらコップいっぱいに入れます(熱いまま入れるとコップが割れるかも?)。コップにはなるべく一杯まで入れるのが望ましいですが、あまり入れすぎるとこぼれ易くなってしまうので、水面が口から1cm以内程度であれば良いです。

あとはひたすら放置します。概ね一週間程度で塩がコップから溢れるのを観察することができます。